ベンチャー企業と審査会
昨日、某市で、市が認めるブランド企業の認証審査委員会に出席しました。
審査委員は専門家、学識経験者などから構成されており、私は会計・税務の専門家としての立場です。
全委員を含めて総合的に評価する段階とは別に、候補企業の直近3期の決算書をチェックする書類審査があります。
決算数値とは不思議なもので、会社の動きを客観的に表すものですから、同じ経営者の下で同じ業務を行っている限り、経費の割合はじめ、そう大きく変わるものではありません。
ですから3期間で決算数値を比較をしたときに大きな増減がある場合、何か理由があります。
それが一つの科目だけでなく、複数の科目が増減している場合、相互に関係することが予測され、何かドラマが見えるような感じがするのです。
オーナーが退職し、株を会社が買い取って、事業承継が行われたのだろう。役員などへの第三者承継が成功したのだろうか。。
震災の影響で大きな損失があっても、その後、持ち直しつつある様子が窺える。。
無借金経営で、とても堅いことはわかるけれど、支払いもずいぶん厳しく、取引先は大変かも。。
…等など、お会いしたことがないだけに、想像は勝手に膨らみます。
成長段階のベンチャー企業の場合、数字だけを見ると、かなり辛口のコメントになりがちです。
企業は経営者の人柄、夢、思い、事業計画などが大切で、
今は悲惨な状況にあったとしても、劇的に変わることも、
どんな可能性もあるのだと、わかっているのですが。。
いつもベンチャー企業を対象にした審査に立ち会うたびに、
私は自分が創業の頃に出会った、多くのベンチャー経営者のことを思い出します。
当時の私は、安定した大企業の会計監査の経験しかなかったので、
そんな経営者の夢を語る姿に、とても魅力を感じたものでした。
ところがどんなに素晴らしい夢を語っても、描いた夢の通りに順調に発展する会社はごくわずかです。
それでも、とても輝いていた、あの頃のベンチャー精神に出会ったことが、現在、この仕事を続けている自分の原点ではないかと思うことが、今でもあるのです。
審査委員としての立場上、辛口のコメントを発する私に、今はもう亡きKさん(開業の頃、尊敬していたベンチャー経営者)が、
「先生、そんなこと言っても…それはどこの会社も、そうでしょう?」
そう笑顔で軽やかに囁く声が、どこからか聞こえたような・・・気がしました。
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