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2009年3月 5日 (木)

棚卸立会の思い出、そして20年

決算の棚卸立会は、会計監査において、とても重要な手続の一つです。

体力勝負ともいえるこの仕事には、若手の会計士が中心にアサインされます。

監査法人では、特に3月決算ともなると日時が集中し、スタッフは全国に散らばって、それこそ猫の手も借りたいほどの状況になります。

代わりの人を探そうにも、間違いなく全員出払ってしまう日なので、絶対に休めない、遅刻できない、というプレッシャーもありました。

また、入所1、2年目のスタッフでも、今まで一度も行ったことのない会社の工場や倉庫の棚卸に一人で行かなければならないこともあり、特に初めて訪問する場所はとても緊張しました。

現地へ行くと、終日歩きっぱなしということも多く、足が棒のようになりましたが、見るものすべてが珍しく、楽しかったものです。

ホテルのレストランの大きな冷凍庫(室)に入って寒さに震えたこと、アパレルメーカーの倉庫にぎっしり入った、数ヵ月後に店頭に出る予定の洋服を見て次の季節のトレンドを感じて楽しかったこと等…強烈な印象を伴った立会の貴重な経験は、良い思い出になっています。

数回経験すると、ある程度、棚卸立会も自分の担当する会社が決まってきます。

私の場合、昼はA社の倉庫、夕方から夜にかけてはB社の店舗、というパターンが多くなりました。夜に棚卸をするのは、店を閉めてから棚卸をするからです。

会社の方が棚卸作業をされている脇を歩いて、質問をしたり、いくつかサンプルをチェックさせていただいて、棚卸の作業が適切に行われていることの心証を得ます。

忙しいところを申し訳ないな、と思いながら自分のすべき作業を淡々と行います。

B社では、立会の作業が終わると、まだ終電には時間があるのに必ずタクシーを手配してくれました。

朝からの棚卸で疲れているので有難く乗るのですが、果たしてこんな待遇を受けられるほど仕事をしているのだろうかと、申し訳ない気持で帰ったことを覚えています。

当時は埼玉県の浦和に住んでいましたから片道1万円余りかかったと思います。

私はたいしたことをしていないのに申し訳ない…と心の中でうしろめたさに似た思いで、疲れきって車のシートに身をうずめ、うとうとしながら見た窓の外の桜並木の、ほころび始めた桜の花が思い出されます。

“時”は、その時点だけを振返ると、あっという間に過ぎ去ったように思えることがありますが、あの日の夜桜もそんな記憶の一つになっています。

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今年、会計士試験に合格して20年になります。

試験に合格しても実務のことは何もわからずに監査の現場に飛び込んだ私に、温かくいろいろ教えてくださった関与先の方々、厳しく優しく指導してくださった諸先輩方、そして監査法人を離れて自分の事務所を開業してから出会った、たくさんの素晴らしいご縁…そんな多くの人に支えていただいたおかげで、こうして仕事をさせていただいています。

振り返ると、自分ひとりでは何も為しえない20年だということに改めて気づかされ、感謝の気持ちでいっぱいになります。

これからあと何年、仕事をすることになるかわかりませんが、今までいろいろな方からいただいたものをお返しができるような生き方をしたいと改めて思うのです。

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